2020年末頃から、海外販売のチャンネルとしてショッピー(Shopee/蝦皮)を利用している。今回は、実際に利用してきた経験を踏まえ、Shopeeに対する感想や意見を述べてみたい。
ショッピーとは?
ショッピーとは、2015年にシンガポールで誕生したECプラットフォームである。
シンガポール以外にも、台湾やインドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、タイといった東南アジア諸国向けのプラットフォームを展開しているほか、メキシコやブラジルでもEコマース事業を展開している。
過去には、2021年10月からインドでもプラットフォームの展開を開始していたようだが、開始からわずか半年ほどで、将来性の不確実性を理由に撤退したとのこと。
Shopeeの主力市場は、やはり東南アジアである。同地域では、アリババ傘下のラザダ(LAZADA)や、インドネシア資本のトコペディア(TOKOPEDIA)といった競合他社を相手に、各国で急成長を遂げている。
実際に利用してみた感想
メリット
- 東南アジアに販路を持たない日本人が、同地域向けにネット販売をしたいのであれば、Shopeeは非常に手軽に始められる。大きな元手を必要とせず、海外販売を始められる点は大きなメリットである。
デメリット
- 日本語対応の専用窓口があるものの、対応が非常に悪い。
- せっかく多数の商品を出品しても、一定期間内に一定の売り上げがなければ、出品可能数を強制的に減らされる。
- 送料を自由に設定できない。
- 同じ商品であっても、販売するプラットフォームによっては出品できない場合がある。
- とにかく、覚えなければならないルールが多すぎる。
- 購入者からの値引き要求が多く、煩わしい。
気軽に始められる
東南アジアのEC市場において有力なプラットフォームであるラザダ(LAZADA)でオンライン販売を行うには、基本的に個人名義での出店は認められておらず、法人名義での登録が必要となる。
要するに、法人登記を行い、会社法人として登録する必要があるということだ。法務局に個人事業主として開業届を提出する程度では認められないため、個人が副業として手軽に始められるものではない。
一方、ショッピー(Shopee)の場合は、法人名義での登録や大きな元手を必要とせず、申請を行って審査を通過すれば、シンガポール・台湾・タイ・マレーシア・フィリピンの各国・地域向けのプラットフォームに出店できる。
ただし、アマゾンセラーのように、グローバルアカウントという統一されたアカウントを通じて、同一の商品を一つの管理画面から複数の国・地域に同時出品できるわけではない。各国・地域のプラットフォームごとに、個別に商品を出品する必要がある。
また、各国・地域の法令やプラットフォーム独自の規定によって、同じ商品であっても出品できる場合とできない場合が明確に分かれている。この点についても、あらかじめ念頭に置いておいた方がよいだろう。
デメリット
日本側窓口スタッフの対応が非常に悪い
日本以外の国・地域でヘルプデスクに問い合わせた経験がないため、他国ではどのような対応が行われているのかは分からない。したがって、今回はショッピージャパンの問い合わせ窓口について取り上げたい。
ショッピージャパンのヘルプデスクとのやり取りは、基本的にメールで行われる。こちらから問い合わせをしても、返ってくるのはほぼテンプレートを貼り付けただけのような回答であり、物事に対して柔軟に対応しようとしない、あるいは対応できない融通の利かなさが非常に目立つ。
恐らく、日本在住の外国人スタッフが対応しているものと思われる。もちろん、これはあくまで個人的な推測であり、実際にどのようなスタッフが対応しているのかは分からない。
ただ、これまでの経験から、ショッピージャパンの対応には、個々の問い合わせ内容に応じて柔軟に判断するというよりも、あらかじめ定められた回答やマニュアルに沿って処理することを優先しているような印象がある。何かトラブルが発生した際に、日本人セラーが求めるような、経緯を踏まえた丁寧な説明や論理的な回答を得ることは、なかなか難しいと考えておいた方がよいだろう。
こうした状況から考えると、ショッピー社内には、外国人スタッフであっても日本人セラーに対応できるよう、日本語の回答テンプレート集のようなものが存在するのではないかと思う。
その結果として、紋切り型の対応が量産されているのではないだろうか。
良く言えばマニュアルに忠実であり、悪く言えば、マニュアルに記載されていないことについては柔軟な対応ができないということである。
個人的には、こうした対応の背景には、言語や文化の違いも影響しているのではないかと感じることがある。中国語は、漢字を用いて簡潔に情報を伝えることができる言語であり、文脈や前提を共有している場合には、少ない言葉でも意思疎通が成立しやすい。一方で、日本語でのビジネスコミュニケーションでは、経緯や背景を含めて細かく説明し、相手に納得してもらうことが重視される場面も多い。もちろん、これは言語や文化に対する個人的な考察にすぎず、国籍によって対応能力が決まるわけではない。
ただ、ショッピージャパンのヘルプデスクに問い合わせをしていると、こちらが求めているのは個別の事情を踏まえた説明であるにもかかわらず、相手側はあらかじめ用意された「模範解答」を返すことが最適な対応だと考えているように感じることがある。
その結果、日本人セラーからすれば、一件一件の問い合わせに丁寧に対応しているというよりも、適当に処理されているように映ってしまうのではないだろうか。
過去に、非常に納得のいかない対応を受けたことがある。
Shopeeでは、商品が売れた後、国・地域によっては日本国内で集荷を行い、商品を仕向国へ混載輸送する方式が採用されている。そのため、出荷時には必ずポップアップウィンドウで集荷先住所が表示される仕組みになっている。
ところが、あるとき、そのポップアップウィンドウに表示された住所へ商品を発送したにもかかわらず、受取拒否されて商品が返送されてきてしまった。
配送業者に確認したところ、指定先住所の担当者から「ここはすでにショッピーの混載貨物の集積地点ではありません」と説明されたとのことだった。
そこで、事情を説明した上で返金を求めたのだが、ショッピージャパン側からは拒否されてしまった。ショッピー側の言い分は、「指定先の住所が間違っている」というものだった。また、その変更については以前から通達していたとも主張していた。
しかし、そもそもShopeeのシステム上では、すでに無効となっている住所がポップアップウィンドウに表示され続けていたのである。
こちらとしては、Shopeeが指定した住所へ、その指示どおりに商品を発送したにすぎない。にもかかわらず、Shopee側は「通達した」という一点張りで、自分たちの非を一向に認めようとしなかった。彼らの論理としては、「勝手に無関係の場所へ商品を送ったのはそちらの責任」ということなのだろう。
結局、送料を支払う気は一切ないということで、返送時の送料は自己負担となってしまった。
こちらとしては、Shopeeのシステム上に表示された住所に従って発送しただけである。それにもかかわらず、システム上の不備によって発生した損失をセラー側が負担しなければならないというのは、到底納得できるものではなかった。
一方で、ショッピージャパンには一定数の日本人スタッフも在籍しているようで、出店後の数か月間だけ、日本人スタッフに対応してもらえたことがあった。
元々、Shopeeへの出店にあたっては、当初、韓国人スタッフが担当してくれていた。しかし、物事の説明がどうにも要領を得ない印象があり、出店して間もない頃に発生したトラブルについても、Shopeeとしてどのように対応するのかという説明を受けていなかった。
その後、トラブルについて説明を求めた際にも、担当者の説明は後付けの言い訳にしか聞こえず、話が一向に進まなかった。
そこで、きちんと説明できる人間を出してほしいと要請したところ、その担当者の上司か同僚ということで、日本人スタッフが以後の対応をしてくれるようになった。
その後、何度かお世話になったものの、この日本人担当者も、ほどなくしてショッピーを退職したようだった。
もちろん、退職の理由は分からない。ただ、これまでの経験を踏まえると、なかなか苦労の多い職場なのだろうと想像してしまう。
Shopee Japanの立ち上げ直後で、社内がまだ混乱していた時期だったのかもしれない。多国籍な職場環境であることも、意思疎通や業務の進め方を統一する上で、少なからず難しさがあったのではないだろうか。
そうした環境の中で、日本人セラーへの対応を一手に引き受けていたこの担当者も、何かと苦労が多かったのではないかと思う。
大量出品しても売れなければ出品数を減らされる
これはShopee独自のシステムだと思うのだが、要するに、ボクシングのチャンピオンがその座を維持するためには防衛戦を重ねなければならないのと同じで、出店開始から一定期間内に売り上げ実績(オーダー数)を残していないと、出品数に制限がかかってしまう。
私の実体験で言うと、Shopee台湾に出店した際、頑張って商品を990点も登録したのだが、なかなか売り上げを伸ばせず、数か月後にはアクティブな出品数が100点にまで減らされていた。
商品情報を一件一件、手作業で登録していっただけに、せっかくの苦労が水の泡となってしまった。さすがに、これはかなりきつかった。
逆に言えば、継続的に売り上げを出していれば、何の問題もないということでもある。売り上げ実績を積み重ねていけば、出店当初の出品数制限である1,000点から、さらに上限を引き上げることも可能となる。
つまり、Shopeeでの出品は、闇雲に商品数を増やせばよいというものではない。何を、いくらで販売するのか、そして、どのように販促を行うのかを戦略的に考えていく必要がある。
個人的には、そもそも取り扱う商品が東南アジア各地で需要のあるものなのかどうかを見極めた上で、出店・出品していくのを検討することが重要だと考えている。
送料設定の自由度が低い
Shopeeの物流方式には、大きく分けて2種類ある。
一つは、先述のように、セラーが日本国内の集積地点に商品を送付し、そこから対象国・地域へ混載貨物として発送する方式。もう一つは、セラーが購入者に直接発送する方式である。
前者はSLS(Shopee Logistics Service)と呼ばれ、シンガポール・フィリピン・マレーシア・台湾・ベトナム・タイの各プラットフォームで利用できる。
一方、後者はEMSや国際郵便などを利用して、セラーから購入者へ直接商品を発送する方式である。ただし、直接発送を利用できる国・地域には制限があり、原則としてSLSの利用が前提となっている。その中で、直接発送が可能な国・地域は台湾とマレーシアだけだったと記憶している。
もっとも、毎週・毎月とコンスタントに出荷できる商品であれば、前者の混載輸送の方が便利な場合もある。
一定の物量を継続的に出荷するのであれば、物流コストを抑えやすくなる。また、よほどのことがない限り、物流事故が発生した際に補償を受けられないという事態にもならないはずだ。
そういう意味では、仕向地への混載便は、利用するプラットフォームによっては格安で利便性の高い発送手段だと思う。
しかし、いずれにせよ、特にセラーによる直接発送の場合、送料を自分で自由に設定できないことが非常に大きなボトルネックとなる。
eBayで販売している人であれば、共感できるのではないだろうか。実はeBayでも、送料にはそれなりの制約がある。例えば、CDの場合、送料の上限が20.00ドルに制限されているケースがあり、Shopeeにもそれに近い感覚がある。
いや、むしろShopeeの場合は、すべてのセラーに対して低送料での発送をかなり強く、半ば強制的に推奨しているように感じる。
そのため、EMSや国際郵便を利用した際に、実際の送料が20.00ドルを超えてしまうような場合には、最悪、送料の不足分を商品価格に上乗せするという方法も考えられる。
しかし、Shopeeの場合、商品価格を値上げすれば、それが売り上げに確実に影響してくる。
したがって、Shopeeで販売する際には、送料と商品価格のバランスをうまく調整することも必要となる。
同じ商品なのに他国のプラットフォームでは販売できないケースがある
食品であれば、対象国・地域ごとに食品輸入に関する独自の規制が設けられている。例えば、Shopee台湾では肉類の取り扱いが認められていない。そのため、マレーシアでは出品できた商品が、シンガポールでは出品できないといったケースもあり得る。
私の場合、楽器用の小型電子機器を取り扱っていたのだが、マレーシアでは対象商品をすべて問題なく出品できたのに対し、シンガポールでは、どういう基準なのかよく分からないまま出品不可と判断され、その大半を取り下げられてしまった。フィリピンでも、これと似たようなケースが発生している。
当然のことではあるが、自分が取り扱う商品が販売予定の国・地域で販売禁止となっていないか、あるいは販売に関して何らかの規制が設けられていないかを、出品前に入念に調べておくべきである。
私の場合、「マレーシアで問題なく販売できているのだから、他の国でも問題ないはず」という先入観があった。というよりも、「どう考えても問題ないだろう、これは」という商品だっただけに、出品を取り下げられたことには驚いた。
考えられる理由としては、電子機器であることから、基板内部のはんだに含まれる物質が環境規制に抵触した可能性や、中古電子機器の流通に政府の許可が必要であるといった、各国・地域独自の事情があるのかもしれない。
もちろん、実際にどのような基準で出品不可と判断されたのかは分からない。
また、以前、Shopeeではインドネシア向けのプラットフォームでも出店者を募集していたのだが、現在は新規出店者の募集を停止しているという。
インドネシアは、もともと輸入に関する規制が比較的厳しい国ということも関係しているのかもしれない。
本業でも、インドネシアの客先へ納品するサンプル品を国際郵便で送付した際、通関書類の不備によって通関できないトラブルが発生したと聞いたことがある。このほかにも、インドネシアは輸入規制が細かく、厳しいという話をさまざまな方面から耳にしていた。
実際にインドネシアの輸入禁制品一覧をざっと見てみたところ、以下のような品目がリストアップされていた。
- 中国文字または中国語による雑誌、印刷物、レコード、録音テープなど
- 名あて国以外の国で発行されたインドネシア語(地方語を含む)の印刷物
- オウム科の鳥の羽毛その他の部分
- 反すう動物または豚の毛、皮、肉その他の部分
また、マレーシアでは、禁制品の一つとして「銃や剣などの武器が付属するフィギュア」が挙げられているとのこと。
インドネシアのケースも、マレーシアのフィギュアの件も、おそらく宗教上の理由や、現地の環境・生態系の保護、あるいは何らかの政治的な事情が関係しているのだろう。
それにしても、「銃や剣などの武器が付属するフィギュア」が販売できないというのは驚きであり、何とも不思議な話である。
例えば、『艦隊これくしょん』のフィギュアは、艦船を擬人化したキャラクターが砲台などの武装を身に着けているため、ほとんどが販売不可ということになるのだろうか。
仮に『戦国無双』や『三國無双』といった無双シリーズのフィギュアがあったとしても、登場キャラクターの多くは武器を持っている。また、ガンプラも武器を装備しているものが多い。
そう考えると、こうした規制が適用される範囲は、想像以上に広いのかもしれない。
覚えなければならないセラールールが多すぎる
ショッピージャパンには「エデュケーションハブ」というページが存在し、そこを通じてShopeeで商品を販売する上で必要となる各種ルールを学んでいく仕組みになっている。
また、Shopeeの規約やルールが変更された際には、セラーに対して必ず通知メールが届くようになっている。
こまめにShopeeからのメールをチェックしていれば、基本的には問題ないはずなのだが、いかんせん、覚えなければならないルールが多すぎて辟易してしまう。
このあたりは、もう少し直感的に管理画面を操作できるようにするなど、改善の余地があるのではないかと思う。
もちろん、販売先の国・地域ごとに法令や規制が異なるため、一定のルールが必要になること自体は仕方がない。
しかし、先述のように、SLSを利用して現地へ商品を発送する際の集荷先住所をShopee側のスタッフが間違え、その責任をセラー側に負わせるようなケースもある。
こうした経験を踏まえると、そもそもShopeeのスタッフ自身が、社内のルールや運用方法をきちんと把握・理解できていないのではないかと疑いたくなってしまう。
値引き要求が多い
Shopeeには独特のチャット機能があり、利用者がセラーに直接メッセージを送ることのできるチャットボックスが設けられている。
私の知る限り、少なくとも中華圏では値引き交渉の文化が比較的強く根付いている。そのため、このチャットボックスを利用して、購入者から値引きを求められることが多々ある。
これまでの経験から、値引き交渉のパターンとしては、次の2種類があると思う。
- ストレートに値引きを求めてくる。
- 商品の詳細について質問してきた後に、値引きを求めてくる。
中華圏の文化ということもあり、Shopee台湾のユーザーからの値引き要求がダントツで多い。
また、それと同じくらいの頻度で、フィリピンのユーザーからも値引きを求められることが多いように感じた。
フィリピンの場合、なぜ台湾人と同じくらい値引きを求めてくるのか、その理由や文化的背景についてはよく分からない。
一方、タイ・マレーシア・シンガポールでは、台湾やフィリピンのユーザーから受けるような、露骨な値引き交渉を経験したことはない。
もちろん、これはあくまで私自身の販売経験に基づく感想であり、国・地域ごとの購入者全体の傾向を示すものではない。
ショッピー台湾で感じたこと
これまでのShopee台湾での販売経験と、台湾在住の友人から聞いた話をもとに、私が感じたことを述べてみたい。
なぜ値引き交渉をするのか?
上述の通り、Shopee台湾のユーザーは、中華圏に見られる商習慣もあってか、比較的気軽に、そして堂々と値引き交渉をしてくる。
とはいえ、ここでひとつ考えてみたいことがある。
不動産バブルが崩壊する以前の中国では、誰もが知るように、金にものを言わせて商品を購入する「爆買い」が話題になった。同じ中華圏に属しながら、中国では値段をあまり気にせずに購入する人がいる一方で、なぜ台湾のユーザーはこれほど値引き交渉に熱心なのだろうか。
この点が気になったので、個人的に考察してみた。
結論から言うと、その背景には、日本と同様に「収入に対して物価が高い」という事情があるのではないかと思う。
台湾の大手求人サイト「人力銀行104」によると、2023年の台湾の平均年収は約69.4万元、日本円に換算すると約333万円だという。20年間で約100万円上昇しているともされる。
日本の平均年収は約460万円であり、単純に比較すると台湾との差は100万円以上ある。ただし、台湾では社会保険料や税金などの負担が比較的軽い面もあり、日々の生活を送るうえでの負担感は、額面の年収だけでは判断できないようだ。
しかし、現地の声として、台湾在住の友人によると、「共働きでなければ生活が成り立たない」「物価が日本と同じように上昇しており、とりわけ子どもの教育費は相対的に高く感じる」とのことだった。
20年以上前に台湾を訪れた際、私は日本と比べて物価が安いと感じた。特に、レストランでの食事や現地のコンビニでの買い物は、その印象が強かった。
しかし、現在の台湾では、当時のような物価の安さを実感できるわけではないという。友人によれば、物価はその後も上昇しており、以前のような「台湾は物価が安い」という感覚は薄れているそうだ。
友人は、例えばレストランでの食事について、20年前と同じような価格で食べられることはまずないと話していた。また、少しおしゃれな店でワンプレートのランチを注文しようとすると、1,500円以内で収まるかどうか、という感覚なのだそうだ。
台湾の若い世代が抱える将来への不安
以前、テレビで、中国福建省の厦門市(アモイ市)が台湾人の若い起業家を誘致し、現地の行政機関などが公的支援を通じて事業をサポートするという内容のドキュメンタリーを見たことがある。
厦門市は、台湾が実効支配する金門島からわずか数キロの距離に位置する、福建省の大都市である。番組は、中国の不動産バブルが崩壊する2021年前後に放送されたものだったと記憶している。
近年、台湾有事をめぐる報道では、中国政府がさまざまな手法を用いて台湾社会への影響力を強めようとしていることが取り上げられている。そうした背景を踏まえると、台湾人の起業家を誘致する施策についても、単なる経済支援にとどまらず、台湾社会への働きかけという側面があるのではないかと感じた。
その番組を見ていて印象に残ったのは、台湾の若い世代が抱える経済的な不安だった。
台湾の経済状況や将来の見通しに悲観的な若者にとって、中国での起業や公的支援は、現状を打破するための選択肢として映るのかもしれない。番組で取材を受けていた台湾人の若い起業家も、自国の経済にはあまり期待できないため、中国で一発逆転を狙い、明るい将来をつかみたいという趣旨の発言をしていたように記憶している。
また、中国側の公的支援を受ける条件のひとつとして、SNSで一定数のフォロワーを持ち、そのアカウントを通じて厦門市を宣伝することが求められていた。
私には、こうした条件が、台湾人の若者を中国側の宣伝に取り込むための仕組みのようにも見えた。台湾国内でも、このような支援に応じる若者を心配する声があると番組では紹介されていた。
もちろん、これは私が番組を見て感じたことであり、施策の目的や背景については、別途検証が必要だろう。
「良いものを、できるだけ安く買いたい」
いずれにせよ、台湾の人々にとっては、欲しいものがあっても「無い袖は振れない」という事情があるのではないか。
日本の消費者のように、ある程度の金銭的な余裕があり、嗜好品にも支出できるという状況ばかりではない。最低限の生活費を差し引くと、自由に使えるお金には限りがある。だからこそ、購入を我慢するか、どうしても欲しいものがあれば、少しでも安く買えるように値引き交渉をする。そうした感覚があるのではないかと感じた。
「安くて質が悪いものを買うか、高くても質の良いものを買うか」という二者択一ではなく、「良いものを、可能な限り安く買う」という考え方が、値引き交渉の背景にあるのかもしれない。
もちろん、これは台湾の人々全体に当てはまると断言できるものではない。あくまで、私自身の販売経験や台湾在住の友人から聞いた話をもとにした、個人的な考察である。
台湾人が好む「着払い」
「着払い」と書いたが、厳密に言うと、Shopee台湾には「取貨後付款」という、商品を受け取る際に代金を支払う仕組みがある。日本の着払いに似た決済方法で、台湾では一般的に利用されており、購入者にもかなり好まれているそうだ。
Shopee台湾のチャットボックスでは、台湾人の購入者から「決済方法を取貨後付款にしてもらえないか」といった問い合わせを頻繁に受ける。
Shopeeでは、売上金が最終的にPayoneerに振り込まれる仕組みになっている。そもそも海外から発送する商品について、購入者が商品を受け取る際に代金を支払うような決済方法には対応できない。そのため、基本的にこうした要求には応じていない。
ネットショッピングではクレジットカード決済が一般的だと思っていたので、台湾の購入者が「取貨後付款」を好むことに、最初は少し疑問を感じた。
「台湾では、クレジットカードを作ることをあまり好まないのだろうか?」
そう考えて調べてみたところ、台湾ではApple PayやLINE Payなどのキャッシュレス決済が利用される場面も増えているようだ。台湾は、時期によっては日本よりもITインフラの整備が進んでいたこともあり、電子取引も比較的早くから導入されてきた。
クレジットカードの普及率自体も決して低くはなく、近年はキャッシュレス決済の利用がさらに広がっているという。台湾政府も、2025年中にキャッシュレス決済の普及率を90%まで高める目標を掲げていたとされる。なお、クレジットカードの普及率は約76.7%という数字も見られる。
そうなると、「クレジットカードの普及率が低いから『取貨後付款』が好まれる」という私の仮説は、必ずしも成り立たない。
そこで台湾在住の友人に聞いてみたところ、実情として、台湾では日本のように注文した商品が確実に自宅へ届くとは限らないのだという。物流事情に不安があるため、先に代金を支払うよりも、商品が届いてから支払う方法が好まれるのではないか、という話だった。
また、後述するように、台湾各地にはShopeeの受取拠点があり、そこで荷物を受け取ることもできる。もちろん、「取貨後付款」はShopeeの受取拠点だけでなく、台湾の大手コンビニでも利用できるそうだ。
【余談】海外の郵便・物流事情を考える
注文した商品が確実に届くかどうかという点で、別の友人から聞いた興味深い話がある。
その友人の妹はアメリカの企業に就職し、現在はアメリカ現地に住んでいる。中南米の郵便・物流事情についても多少知っているようで、彼女によると中南米では郵便物が確実に届くとは限らず、中南米宛ての荷物だけでなく、中南米から国外へ送る荷物にも紛失のリスクが常に付きまとうとのこと。
そのため、国際郵便を利用する際には、荷物が届かない可能性もある程度覚悟しておく必要がある、という趣旨の話だった。
アメリカとメキシコの国境を越えて、毎年多くの移民(難民)がアメリカを目指している。そうした移民は、すべてメキシコ人というわけではなく、南米各国から長い距離を移動してくる人々もいるという。
その背景には、国によって異なるものの、政治や治安の不安定さ、経済的な困難などがある。政府上層部や一部の富裕層に富が集中し、一般の人々には十分に行き渡らないといった問題も指摘されている。こうした社会状況を考えると、郵便や物流の仕組みが十分に機能していない地域が南米にあったとしても、不思議ではない。
この点については、コロナ禍のボリビアを取り上げた報道も印象に残っている。コロナ感染による死亡者が急増し、埋葬や火葬が追いつかず、町中に棺が置かれていたという内容だった。また、アルゼンチンやベネズエラのように、かつては農業や石油などの資源を背景に豊かな国として知られていた国でも、経済危機や高いインフレなどが問題となっている。
もちろん、南米各国の経済状況や郵便事情は一様ではない。ただ、社会や物流の仕組みが不安定な地域では、郵便物を送る側も受け取る側も、一定のリスクを考慮せざるを得ないのだろう。
CNNで放映された、南米からアメリカを目指す移民を扱ったドキュメンタリーも記憶に残っている。そこでは、カリブ海の国ハイチから幼い子どもを連れて南米へ渡った若い夫婦が紹介されていた。インタビュアーから、なぜハイチを離れたのかと尋ねられた夫婦は、「ハイチでは豊かな生活を送ることが難しく、貧しいまま希望もなく生きていくしかない」といった趣旨の話をしていた。
もちろん南米各国には郵便制度そのものは存在しているものの、郵便物が途中で紛失したり、破損したりする可能性があり、郵便が正常に機能しているかといわれればそれは疑わしいのは間違いないようだ。反対に言えば、それだけ日本の郵便も宅配便も優秀すぎて、それが当たり前のことだと我々が錯覚しているということだろう。
ちなみに、これまでに南米から受けた注文は1件だけで、しかもShopeeブラジルからのものである。
ショッピストアの存在
日本には、これに似た仕組みが存在しないため、日本人には少し理解しにくいかもしれない。
あえて日本のサービスに置き換えて説明するなら、例えば、楽天の本拠地がアメリカにあり、大半の販売者がアメリカ国内に会社や倉庫、工場を持っていると仮定してみよう。
楽天で商品を注文すると、複数の注文商品が混載貨物として国際輸送され、日本国内にある、購入者が指定した楽天の受取拠点に届く。購入者は、そこへ商品を受け取りに行く――。大まかには、そうした仕組みに近いと考えれば分かりやすい。
この仕組みの根底にあるのは、物流費の削減による商品価格の引き下げ、そして売上の向上だと私は考えている。
理由はどうあれ、少しでも安く商品を購入したいという消費者は多い。Shopeeでは、海外各地にある集積拠点で注文商品を集め、SLS(Shopee Logistics Service)による混載輸送で台湾へ運ぶことが、その実現手段のひとつになっているのだろう。
商品ごとに固有の認識番号、つまり注文番号が割り当てられているため、紛失のリスクはある程度抑えられていると考えられる。
ただし、私の想像ではあるが、現在のShopeeの物流管理は、日本の物流サービスと比べると、貨物の紛失や追跡情報の精度に課題があるようにも感じる。
また、混載貨物といっても、おそらくコンテナを1本単位で確保し、集積した注文商品をまとめて輸送しているのではないだろうか。そうすることで、一定の輸送品質を確保しながら、輸送費のコストダウンを図っているものと思われる。
注文番号が割り当てられていることで、注文商品のトレーサビリティも確保されている。海外の集積拠点がチェックポイントのような役割を果たし、荷物に付されたバーコードを読み取ることで、商品の現在地や輸送状況がShopeeのシステム上に更新されているようだ。
そのため、セラーも購入者も、商品の輸送状況をある程度確認できる。
とはいえ、私が確認できる範囲では、出荷時・集積拠点・受取ストアといった限られた地点でしかステータスが更新されない。そのため、輸送中の詳細な状況や、各区間のリードタイムまでは把握しにくい。
また、台湾在住の友人によると、コンビニの跡地などにShopeeの受取拠点であるショッピストアが居抜きで出店することも多いという。台湾のShopeeユーザーは、郵便局やコンビニに荷物を受け取りに行くような感覚で、ショッピストアへ注文商品を取りに行くのだそうだ。
海外の商品を購入するユーザーも多く、化粧品や日用品などを、Amazonや楽天で買い物をするような気軽さで注文しているという。
ただし、海外からの輸入品であっても、価格が安くなければ購入しない。少しでも安く買いたいという意識が、台湾の消費者には強くあるように感じる。
ショッピーとどう付き合うか?
シンガポール・台湾・タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナムと、東南アジアを中心に複数の市場へ展開していることは、Shopeeの大きな強みである。
一方で、一定期間売上が立たなければ、出品数に制限がかかるという特徴もある。
この仕組みを踏まえると、出店時に取り扱うジャンルをひとつに絞るのではなく、複数のジャンルの商品を扱い、常に注文が入りやすい「鉄板商品」を何かしら確保しておくことが重要なのではないかと感じた。
私の場合、一番初めにShopee台湾から販売を始めた。当時保有していた中古ゲーム・CD・攻略本をほぼすべて出品し、日本国内での販売価格に若干の利益を上乗せして価格を設定していた。
上述のように台湾の物価感覚や消費者の購買意識を踏まえると、私が出品していた商品は、台湾の購入者にとって比較的高価な嗜好品だったのではないかと思う。
そもそも、ゲームやCD、攻略本といった商品は、なくても生活に困るものではない。趣味にお金をかける感覚も、日本とはかなり異なる可能性がある。収入に対する節約意識が強いのであれば、なおさら購入のハードルは高くなるだろう。
また、台湾の人口は約2,300万人(2024年3月時点)である。日本の人口約1億2,400万人と比べると、消費者の母数はかなり小さい。
もちろん、人口だけで市場の規模や魅力が決まるわけではない。しかし、台湾市場は日本人セラーにとって魅力的な販売先である一方、想像していたほど競争の少ない「ブルーオーシャン」ではないのかもしれないと感じている。
一方、Shopeeが展開する他の市場にも、それぞれの可能性がある。
2024年時点の人口を見ると、マレーシアは約3,400万人、ベトナムは約9,900万人、タイは約7,200万人、フィリピンは約1億1,730万人である。さらに、現在は新規出店できないものの、インドネシアの人口は約2億7,750万人に達する。
これらの市場には、それぞれ異なる消費者層や需要があり、相応の販売機会があるはずだ。
だからこそ、やみくもに商品数を増やすのではなく、各市場の消費者の購買力や嗜好を考慮しながら、出品する商品を慎重に選定する必要がある。
Shopeeで販売を続けるうえでは、単に多くの商品を出品することよりも、継続的に注文が入りやすい商品を確保し、売上を維持することが重要なのではないだろうか。